日本において、犬の室内飼いが主流になったのは90年代後半頃です。それまで、多くの犬は屋外でつなぎ飼いが普通でしたが、社会的に室内飼育が推奨されるようになり、飼い主には室内で犬を飼育するためのノウハウを手に入れる必要性が生じました。 犬は、走り、吠え、噛んでモノを確かめる生き物です。騒がしい状況になると「吠え」が、ヒマになると「噛む(≒いたずら)」の頻度が上がるものです。吠える/噛むことは、騒音としてご近所への気兼ねの中心になり、繊細な家具の購入を控える原因になり得ます。またこの悩みの深刻度は、都会のマンションから郊外の一軒家まで、所在地や住居形態によっても変化するため、飼い主が思い描く快適ライフを送る場所の選択にさえ影響しかねません。人社会で生活するためのしつけも必要でしょう。こんなに生活を制限し、努力が必要なのに、飼い主はなぜ犬との生東京農業大学教授(動物行動学)ますだ こうじ増田 宏司29雑誌「いぬのきもち」での解説コメントを担当しており、「犬の幸せ 私の幸せ」や「このくらいはわかって! ワンコの言い分」など著書も多数。動物行動学の研究を通し、飼い主と愛犬の双方が幸せに暮らせる社会を目指している。活を送るのでしょうか?それは、犬が純粋かつ無限の愛を飼い主に向け続けるのと同じく、飼い主もまた、いつまでも愛犬と一緒に居たいからに他なりません。 頼もしいことに、この20年ほどの間に、飼い主と愛犬の「いつも一緒に」をサポートしてくださる企業が増えてきました。犬は快適な家のみならず、飼い主と様々な場所に出かけ、多くのことを楽しめます。走るのが好きなボーダーコリーと広大なドッグランに出向く、人の隣で歩くのが好きなゴールデンレトリーバーと遊歩道付きのグランピングに出かけるなど、犬との旅行1つとっても、季節や犬の性格に合わせて出かけられる選択肢が増えました。社会が動物との共生に向け、種々の課題に苦労しつつも、徐々に、しかし着実に進んでいると実感する今日この頃です。Column「いつまでも 一緒に居たい 犬と主」
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